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この日だけ3月 22日 日 .


先週は東京に何日か行ってました。理想的な環境とは言いがたい(控えめな表現)左の人の家に3泊したら風邪を引きました。

今回の遠征のテーマは「取りそこねたキノコを取りに戻る」です。すなわちお世話になったけれどもお礼をちゃんと言えていない人とか、お互い名前は知っていたけれども実は会ったことがない人とか、もう何年も会ってないけど改めて話がしたくなった人などに会って、今後ともよろしくと言って回る旅です。過去を未来につなげる旅です。とか言うとかっこよさげですがやってることは昔のつてをたどって金の無心をしている人のようです。

ほぼ全員建築関係者ですが誰に会って何をしゃべったかは私的な話なので言いません。ふだんもっと極私的な話を書き散らしておいてどの口が言うかという感じですが、やっぱりがまんできないので一人だけ書くと、大島健二さんに初めてお会いしました。恵比寿の事務所(兼住居)にぽむ揃ってお邪魔して、下にも置かない歓待を受けたいへん楽しみました。過剰で笑いの取れるサービス精神さすが関西人。おもてなしの極意を思い知る。見習ってやる。

以下訪問した場所のおぼえがき。

平田晃久トークイベント@南洋堂。ナビ松田達くん。木とか雲とかの形を決定していく「内発性の原理」の話。おもしろかった。伊東豊雄さんが果物の皮だとしたら、平田さんは果物をつくろうとしているのだなあと思いました。皮よりもさらにロマンチックだ。どういう道具を使ってデザインしているのか知りたい。←おぼえがき

「山からはじまる街づくり」展@新宿パークシティ。東京産の木材の展示。ミリメーターさんがデザインした道路用防護柵もあるよ。あきる野と日の出の材木屋さんたちが主催。どこ中ですかとか地元トークをしつついろいろ聞いて勉強になった。あきる野で林業やってるのもろくに知らなかったすみませんでした。一大消費地かつ一大デザイナー生息地の近くで資材が供給できることのメリットとは何か。

東京文化会館→国立西洋美術館。前川國男の大きさ暗さとコルビュジェの細かさ明るさについて考えようとしたけどすぐ止まる。常設展の17世紀オランダ絵画がよかった。おたくくさくて日本人と相性がいいと思う。ロビーのシェーズロングに座っていたところいつのまにかガチ寝しており目が覚めると20分くらい経過していた。どうやらこの椅子を体験したい女の子たちが順番を待っていたらしくたいへん申し訳なく思いながら立ち去り弁天堂でおみくじを引いたりアメ横で餃子を買ったりする。

東京は森みたいだなあ。歩く先にどんな風景が現れるのか予測できない。

できるだけ猫ホテル(=桂の家)に滞在する日数を減らしたいので本当のホテルに泊まったりする。神楽坂のほんとに森みたいな狭い路地をぐねぐね上がった豊かな場所にある。東京における斜面ポテンシャルについて考えようとしたけどすぐ止まる。調子に乗って神楽坂から東京カテドラルまで歩く。じつは初めて行った。学生のうちに行って建築の力を信じるべきだ。

その対面の椿山荘。山県有朋の庭。庭園の中にほんとに山と谷があって思わずおお〜。池というより谷川を囲むように回遊する。自然主義的とか近代主義的庭園ていうんですかこれ。見立てとか以前にリテラルに山河あり。斜面ポテンシャルをピクチャレスクと迫力に変換している。お約束も信じてるけどそれ以上に経験を信じている。豪腕だ。あと庭に「外部」が想定されていると思う。音を立てて流れる小川は水の来し方と行く先がどこか庭の外側に存在する可能性をほのめかすし(実際にどうかはともかく)、高いところに登ると眺望が開けて視覚的に外部に接続するし。借景じゃなくてこの庭がさらに大きなランドスケープの一部になるってこと。天動説じゃなくて地動説的。自らを相対化する庭園ていうのはたしかに近代的な存在だわ。

ラクーア@後楽園。竹中工務店。夜のコースターは類のない都市景観。コースター+観覧車+東京ドームをガラスの壁一面に臨みつつ朝まで仮眠できるすごいフロアがあるぞ。女子専用だけどね。私はそんなところでは寝られない。

中山競馬場。初。コンパクトさがいい。複雑なコース形状と起伏のせいで風景があんまり庭園的じゃなくて、イギリスの競馬場みたいな(行ったことないけど)ワイルドな感じがするのもいい。1階のレストラン棟という名の売店街が、各店の3方に幅2mぐらいの通路+カウンターがぐるっと巡ってて、立ち飲み屋街みたいになってるのもいい。ちょっと古めの競馬場の陰影みたいなものがいい。京都競馬場の次に好きかもしれない。中山のコースはゴール前200mが上り坂になってるのがゆうめいで、『みどりのマキバオー』ではドリフのコントかってぐらいの急勾配に描かれている。画面で見ててもまるでわからないんだけど、実際見たらもう竜か大蛇かってぐらいうねっているのですね。駈け登るという表現がとても似つかわしい。ちなみにこの日は3年前の桜花賞で勝って私を儲けさせてくれた牝馬の引退レースだった。衰えたとはいえ足取りがいちばんしっかりしていたのが女王らしくて気に入った。そんな女王がドラゴンの背中を駈け登ってきて勝った。ちょっと泣いた。