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この日だけ4月 25日 日 .


【多義的なる東京】

都会でもニュータウンでも僻地でもないあまりにも中途半端な私の故郷、私の東京。

み江さんの実家は新宿からJRで60分片道620円。密度の薄い住宅地。集落の南側は川と田んぼと丘陵で閉じられている。秋川っていう多摩川の支流。鮎がいる。丘陵の向こうは八王子。北側は一段高い阿伎留(あきる)台地、ばばーんと畑が広がっていて特徴のある景観。宮沢りえちゃんが畑で自転車こいでた味の素CMのロケ地はここらしい。(うちの母情報)

中学校はとうもろこし畑の真ん中にあり農道を歩いて通う。土が合うらしくなぜかあきる野の特産品はとうもろこしである。夏になるととうもろこし畑は背が高くなって、変質者が身を潜めるには絶好の環境であるため、なるべく農道の中央を歩いて帰りなさいねと先生がHRで呼びかけていた。さいわい私は遭遇したことがない。

出身を聞かれたら東京ととりあえず答えるけど、もうちょっと突っ込んだ情報が必要なときは東京の田舎ですと付け加えないといけない。その説明はけっこう面倒だ。たいがいの人、とくに遠方の地域の人が思ってる「東京」にはまず牛や鮎は住んでいないからだ。ハワイの生まれですでも寒いとこです、ぐらいの。あきる野あたりだとまだ大したことないけど、桧原や奥多摩などは真剣に山岳僻地であり上海より遠い。東京の田舎なめんなよ。

中央線→青梅線→五日市線と乗り継いでいくと、「都市っぽさ」と「農村っぽさ」はグラデーションになっている。私は中央線に乗って三鷹のはずれの高校に通ってたんだけど、うちからだとにぎやかで便利なところに出るっていう意識だし、都心部から通ってた子にとってはのどかなところっていう感覚。何か任意の基準を設定してむりやり区切らない限り、ここからが街、ここからが都会っていう境目がない。城壁もないし。ちなみに洛中洛外の「洛中」は幕府の直轄地を便宜上そう呼んでいた。と高橋先生が言ってた。

ここいらの人は都心部に行くことを「都内に行く」と言う。「東京に行く」とは言わない。なぜならここも東京都だから。ここも東京だという意識は明らかにある。

京都に住んでるみ江さんは、実家に帰省することを「実家に行く」と言う。「東京に行く」とは言わない。だってあきる野じゃん東京じゃないじゃん。取材とかで都内で用事をするのは「東京に行く」だけどさ。

「東京」は多義的だ。少なくとも私にとっては。みんなどこを指して言っているのだろう。(つづく)