み江(以下M) 更新さぼっている間に次の号が出てしまいましたね。
桂(以下K) 45号のほうが面白そうじゃん?厚いし。
M はい今回はさらりと行きましょう。
K さて今月から新建築の(よくできた)HPにリンクを張って、作品の概要がわかるようにしてみましたよ。
もくじ
黒川紀章 『大阪府立国際会議場』
新・現代建築を考える○と× 『大阪府立国際会議場』 ゲスト鈴木博之
隈研吾 『作新学院大学』
伊藤恭行+宇野亨/C+A 『愛知淑徳大学8号棟』
新井清一+アライ・アーキテクツ京都スタジオ 『京都精華大学実習棟』
山本圭介+堀啓二 『工学院大学八王子キャンパス15号館』
宮崎浩/プランツアソシエイツ 『世田谷自動車学校』
工藤和美+堀場弘/シーラカンスK&H 『奈良屋幼稚園』
おまけ 京都大学総合博物館自然史棟
建築家登場 青木淳
池原義郎 『富山県総合福祉会館』
岸和郎 『かづらせい・寺町』
総合コーディネーター磯崎新 『岐阜県営住宅ハイタウン北方』
連載 「歴史は現代建築に必要か」 第2回 藤森照信
| 黒川紀章 『大阪府立国際会議場』 |
K 今回巻頭カラー、 黒川紀章先生 ですよ。GA JAPANなのに。副題:21世紀都市建築の原型を考える、だそうです。
M 黒川紀章、訴えたからじゃん? 文春かなんかで。
K そんな社会派ですか? GA JAPANが? 関係ないだろう。
M うん絶対ない。なにしろ二川幸夫編集長の独断と偏見はあらゆる社会現象を超越しているからな。
K うーん。とりあえず「この建物が巻頭に載る必然性を考える」ことにしようかな。
クリーンエネルギーファクトリー研究所
M 場所中之島? オオサカのどまんなかですね。
K 聞いた話だと、この建物、ゴジラシリーズの最新作 「ゴジラ×メガギラス」で「クリーンエネルギーファクトリー研究所兼発電所」とかいう設定で結構重要な役どころを担うらしいよ。
M ゴジラ似合うなあ。悪いけどすごく似合うよ。そびえてるもん。どどーんと。戦後日本の誇る怪獣映画の金字塔には戦後日本の誇る怪獣建築ってことで。
K 丹下健三大先生のフジテレビ率いるお台場島でもゴジラは戦うようですよ。
M うひょー。ゴジラ楽しみだなあ。やっぱり踏みつぶしたりするのかなあ。踏みつぶしがいがあるもんなあ。
メカニカルウェハース
K この建物の中身はホールと、丸い会議場と、イベントホールかな。そんでフロアーごとに設備なんかを納めた『メカニカルウェハー』というのが挟まってるのがウリ。
M 会議場はあれだね、アメリカ映画に出てくる円形会議場に違いない。そこで地球の存続に関わるようなひみつ会議をするんだ。
K そうか? 内観写真を見る限り「大阪でオリンピックを開こう2000」みたいなシンポジウムやりそうな感じですよ。
M 外見は逆さ円錐なのに、内部はドーム状。おかしいな。間の隙間は何かな?
K あれですよ。黒川さんの大好きなハリボテです。ソニータワーとか塔屋が本建築の倍くらいの高さがあるじゃないですか。
M ああ「かぶるだけで身長が9cmアップ!シークレットかつら」みたいなあれですね。じゃあ間に入っているのは空気ですか?
K もちろんそうでしょう。『メカニカルウェハー』というのもあれですね。空気がいっぱい入っていてとろけるような舌触りで見た目の割にカロリーの低いお菓子のことでしょう。
M ウェハースね。不二家の。見た目の割にってとこが重要だな。ところでこの屋上庭園すごいっすよ。こりゃ一本とられちゃったなあ。
K おっさんが好きなあれですね。柱等間隔に並べてあるヤツ。意味あるのか?
M イソザキ先生の京都コンサートホールとかにもなぜかありますね。どうしてもオッサンこういうの作るよな。うれしいんだろうな、こういうのが。
K イベントホールもすごいですよ。これはいわゆる式場ですね。松の間とか、竹の間とかいうヤツですね。
M そんで裏側には強そうなボーイが100人控えているんだ。ちょっとでもジュースが切れたりしたら即座に持ってきてくれるぞ。
K ホテルニューオータニ形式の重厚な日本的ホスピタビリティが感じられますね。
M けっこう図面からイマジネーションがふくらむね。わかりやすい図面なんだ。イマドキけんちくの図面のわかりやすさとは意味が違うけど。過去の経験から演繹的に理解していけるわかりやすさ。
| 新・現代建築を考える○と×『大阪府立国際会議場』 黒川紀章・鈴木博之・二川幸夫 |
M ○と×、ビッグな面子ですね。釣り合いとれないからな、黒川紀章ともなると。
K ゲスト鈴木さんか。でも一口に‘鈴木さん’っていっても‘鈴木了二さん’ではないし、ましてや‘鈴木隆之さん’であるはずがない。
M そう、日本を代表する建築史家、東大教授鈴木博之先生であらせられるわけです。
二川 ぼくは非常に勘が良くて「先買いの二川」と呼ばれるくらいですから、建築家の動向を迅速にキャッチするんです。同時にあまり興味がないと近寄らない。黒川 まさに二川スタイルですね。
K 二川先生、のっけからトバしてますけどいいんですか? この重厚なメンツで。
M 新展開ですな。初っ端から自慢ですか。まさに二川スタイルですね。
二川 それから、この会議場のことを知っていたのも、たまたまぼくの常宿が隣にあるロイヤルホテルだったからなんです。K ・・・「この建物が巻頭に載る必然性」がわかってしまいました。
M ただの偶然でしたね。必然じゃなかったですね。
黒川 このシステムは30年間暖めていた構想なのです。じつは71年に行われたポンピドーセンター国際コンペの時にまず提案していたのです。それは4本柱だけで支えてその中に情報を入れて、吹き抜けからは光が注ぎ落ちる案だったのです。まさに伊東豊雄くんの「せんだいメディアテーク」に見られるドミノの先を行っていた案だったのです。(笑)M 30年間あたためたみたいですね。
K あたためすぎっす。 もう30年あたためてみたらいいんじゃないですか。
M せんだいメディアテークより先だっていってますよ。 30年も。
K 黒川さんすごいんですねえ。
M すごいのはゲストの鈴木先生ですよ。この辛口トーク。ご自分の役どころをわかっていらっしゃる。
鈴木 設備階が挟み込まれている。また、単純なものではないけれど6本のコア柱だけで支えられている。しかもその間に挟み込まれている3つの大きな空間の性格はそれぞれ違う。それだけでも、もっと表に表現されても良かったんじゃないですか? なぜ、それを建物全体の箱というところで押さえこんでしまっているのか? その辺に黒川さんの持っている二つの側面がぼくには非常によく見える。一つは、大変優れた理論家であり、かつての未来学者であり、現在の21世紀の社会を考えるシステム的思考の持ち主。一方で、建築家としての古くさい様式観と、その形態言語に対する思いこみのある人間像。その矛盾する二つの側面が、この建物の表現に出てしまっている気がするのです。K さすがでありますな。シュアな批評家鈴木博之先生。面と向かって一刀両断です。この一言を言うためにここに来たんですね。
M 黒川さん何て返事するのかな?
黒川 どういわれても結構なんです。目に見える形の建築表現は、とても短いスパンの様式に過ぎないと思います。ある意味では時代の気分でしかない。でもぼくが狙っている建築というのは、重量に抗して存在感を最大限に表現するということなのです。M うわあ、開き直ってるよ。しかも逆ギレかよ。すごいわあ。
K オレは重いのしか作れねえんだよ!いいじゃん。重いけんちくってイマドキ稀少だよ。ゴジラにも出られるし。
M まとめたな。もう終わりでいいの?
K いいよ。さくさく行こう。
| 隈研吾 『作新学院大学』 |
K 隈くんがいつのまにか大きいものを作っていました。
M 作新学院といえば江川卓ですね。
K ああ、あの手抜きピッチングを得意とした80年代を代表するうさんくさ投手の出身高校ですね。
M でも、こういうの初めてじゃないですか隈さん。
K しかも見た目結構普通ですよ。
M 「ああいう隈くん」や「そういう隈くん」じゃないですね。
K そうそう。「決め球フォーク、以上!」っていう 『水/ガラス』みたいないつものワンショット建築じゃないみたいです。
M 『50年代モダニズムみたい』ってユキオに言われてますよ。
K そうかなあ? どういうことだろう。
M それに対する隈くんの回答は、『近代建築の持っていた荒々しさを呼び戻す』ということと、『大きいものは大きくつくる』ってことみたいです。スケールの問題ですね。
K 要するに、「普段1/100で引く図面を、1/300で引いてみました」ってヤツですね。それは荒々しい。抑えで活躍していた選手が急に先発に回ると、長いイニングを同じテンションで投げるわけにいかないから何をするかっていうと、かわすピッチングを覚えるわけです。それと同じですよね。
M 完投するには工夫がいるわけですね。作新ということで江川に学びましたね。ヘタレプロ根性を。安藤忠雄みたいに体力勝負できる人や伊東豊雄みたいにオリジナリティが尽きない人はいいけど、選手生命をちぢめたくない人はチェンジアップ覚えたり打者のタイミングはずしたりしないと。
K 隈くん本人もそういうこと言ってますよ。
隈 ルーズさと精度の配分というのは、破綻の話と同じでそれを上手くやっていかないと難しい。大体の人は全部精度でやろうとして、でも安藤さんまでのレベルはないから全部中途半端になってしまう。そういうことを、今回はやりながら勉強させてもらったんですね。M うんうん。フィルムを貼ったガラスやらオリジナルデザインの穴あきルーバーを見せ球にして、あとはゆるいカーブといった趣の、つかみどころがないというかようするに何の変哲もない空間でかわすという、まさに体力温存型のピッチングでおとなしく仕上げてますね。
K ところでこのホールの内部とかすごいですね。村野藤吾ですか?この建物じつはポストモダンですか?今回の決め球はやはり50年代モダニズムの隈流アレンジメントですか?デビュー当時の決め球がよみがえってきましたか?
M いや決め球はこの『霧のオブジェ』でしょう。どうせこういうのはお金の関係ですぐ止められちゃうのになあ。『風の卵』みたいにさ。
K 若い学生のみなさん『風の卵』知ってますかー?
M こういうのって理事会とかで決めるのかね。「アートを作りましょう」とか言って。
K 決め球見事にすっぽ抜けてますね。
| 伊藤恭行+宇野亨/C+A 『愛知淑徳大学8号棟』 |
M 写真うまいな。
K キレイな建物ですね。
M それだけ?
K それだけ?
| 新井清一+アライ・アーキテクツ京都スタジオ 『京都精華大学実習棟』 |
K 無料マンガ喫茶の精華大、精華大といえば マンガ学科のあの建物です。
M ここの卒業生は履歴書に「マンガ学科卒」って書くんだよ。『こち亀』の両さんの「東京大学プラモデル学科卒」みたいだよ。
K 硬い会社受けるの無理ですね。面接官に信用してもらえないかも。
M 「カトゥーン実習室」「アニメーション制作室」に、なななんと「ストーリー実習室」まであるよ。ドキドキしますね。是非モグって受講したいですね。
K 大学校舎のリニューアルにつきものなのが、‘教授のワガママ’ですけども、案の定いろいろ要望とか取りまとめるのが大変だったみたいですよ。
新井 各分野の先生がいらっしゃって、彼らからの要望が全て違う。でもぼくらの意図に反して、みなさん塞ぎたがるんです。それがどうしてなのか、よく判らないですが(笑)。ともかく、外からも内からも見えてしまうのを嫌う。M 当たり前じゃ!オープンだと気が散るんだよ!けんちく家は開くとかいうのが好きすぎます。閉じてる方が落ち着くに決まってるじゃないか。
K 今度見学しにいって外からストーリー実習室のぞき込んでみようか。ほとんど嫌がらせ。
二川 唯一あなたらしい表現は階段室だけだね。でもその階段室がイヤじゃない。しっくり溶け込んでいる。M 「あなたらしい」階段室。あなたらしい表現です二川先生。
K この人モーフォシス出身だからね。唯一モーフォシスっぽい空間って意味なんでしょうか。また大雑把なことを。
M ふーん。教室の方がいいな。
K この蛇腹が巻いてある柱はシャレてますね。西武ロフトっぽいですね。さらに床のフローリングが図工室を彷彿とさせる仕上がり。ショップのセンスですね。
M 絵の具だらけになるよ。柱といい床といい、汚しがいがあるよ。
K いいじゃん。気が利いてて。まあ確信的にやっているのかどうかわからないけど。
| 山本圭介+堀啓二 『工学院大学八王子キャンパス15号館』 |
M お、50年代っぽいですね。
K まさに。このガラスブロック+打ちっ放しコンクリは50年代ですね。さてこれは何学科かな?
M 工学部。
K いや、そりゃそうだろうよ。工学院大学なんだから。で学科は?
M 重要な問題だなそれは。プログラムってやつにかかわってくるからな。
K 政治工学科じゃないすか? 学生ラウンジが妙にでかいから。政治にはロビーが不可欠だからね。
M 勝手に学科作るなよ。まあ都市計画とかは政治工学と呼べないこともないけど。
K 実際ね、京大の土木の建物にはでかいラウンジがあるんだけど、そこで何が行われているかというと、ホントに‘政治’が行われているの。春先に「お前、どこの会社行きたい?」「オレどうしても○×公社行きたいんだけど」とか話し合う姿はまさに談合。
M さすが土建屋の卵たちですね。じゃあこの工学院大学政治工学科もまちがいなくそれになるね。って本当かよ。
| 宮崎浩/プランツアソシエイツ 『世田谷自動車学校』 |
K 自動車学校はやっぱり黄色なんですね。イメージカラーが。私が通っているところも思い切り黄色いですよ。
M 黄色は注意ってことかな。しかしまた透明だよ。学校を透明にするのはいいかげんに・・
K 自動車学校は透明なほうがいいんだよ。通ってる人間の半分はヤンキーなんだから。それにしてもいいなあきれいな自動車学校。本気でうらやましいよ。通ってるところはビジネスホテルのロビーみたいなしなびた空間しかないよ。しかも元ヤンのオネエチャンがたまってタバコ吸ってるからとても入り込めない。
M うわ本気でうらやましがってるよ。客観的に見られなくなってる。まあこんなもんでいいか?ここは。
| 工藤和美+堀場弘/シーラカンスK&H 『奈良屋幼稚園』 |
M 幼稚園にしちゃ地味ですねえ。
K いいんだよ幼稚園は地味で。どうせ派手になるんだから。
M あそうか。壁にひらひらしたもの貼られたり、チューリップを描かれたりとか。お、すでにやられてますね。おさるさんかなあ?これは。
K コンセプトは「建築自体が園児の遊び場」いいですねえ。
M お、階段が滑り台になってますよ。床にブロック埋まってるよ。柱に目盛りがうってあるよ。背丈を測るんだね。いいねえ。幼稚園の設計したいなあ。子供の喜ぶ仕掛けをたくさんつくるんだ。すげえ楽しいよきっと。
K 珍しくけんちく作りたがってますね。いつも建築写真見ても他人ごとのように「フーン」とか言ってるだけなのに。
| 番外 京都大学総合博物館自然史棟 |
K 今回は学校建築特集だったけど、学校建築といえば、我々の棲む京大も常に校舎建設関係で揺れに揺れているんですよね。
M 年に一つは新しい校舎が建ってるんだけど、雑誌に取り上げられたことってないですね。どうしてかな。
K とうとう新しい博物館がベールを脱ぎましたよ。これも雑誌に取り上げられない可能性大だからここで紹介してあげましょう。最初見たときはちょっと言葉を失っちゃいました。
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K すごいよなこのギザギザの壁。重々しいことこの上ない。
M えっなにこれ壁だったの?わたしゃまた工事中の仮設覆いかと思ってた。百万遍のスケールをまったく無視してますね隣の文学部博物館と並んで。学研都市と間違えてませんか?
K 京大ここらへん一帯は全部博物館になる、題して‘京大博物館化構想’っていう雑談していて出てきたブラックジョークがあるんだけど、これは結構現実味がある話で、武田五一先生モノや森田慶一先生の湯川記念館みたいな有名どころだけ残して、それぞれが独立の博物館になるんじゃないかっていう。
M 京大博物館化構想ですか。肝心の学校の実の部分は宇治やら桂やらに封じ込めるわけですね。なにしろ工学部も桂移転が決まってるからね。学生泣いてるよ。イヤだなあ。
| 建築家登場 青木淳 |
K 今最もわかものの支持を集めている青木淳先生登場ですよ。
M わかものに人気・・・まじめに読むか。
K かわうそみたいな反応ですね。
二川 あなたは磯崎新さんのアトリエに随分長くいらっしゃったけど、どうして磯崎さんのところに行こうと思ったんですか?
青木 カッコイイからです!好きだからです!ステキだからです!ファンだからです!ああなりたいと思いました!(代返ぽむ)二川 スターリングの事務所にはどうして行かなかったのですか?
青木 外人だからです!英語が苦手だからです!(代返ぽむ)二川 そのころ磯崎さんは何をやっていましたか?
青木 よくわからないけどスターでした!(代返ぽむ)二川 それで7、8年事務所にいらっしゃって、どういうことを磯崎さんに学ばれましたか?
青木 わかものに憧れられることです!あとイッセイ・ミヤケのシャツかな。(代返ぽむ)二川 担当されていた作品にはどういうものがありましたか?
青木 とにかくいろいろやりました!(代返ぽむ)K ・・・まじめに読もうよ。
M すいません。ではここからまじめに。
磯崎さんの場合には古典建築が持つようなプロポーションであったり、純粋なプラトン立体であったり、そういうものが持つ形式性があると思うんです。ぼくはそういう形式性を持っていないのですが、形式性に対する憧れみたいなものがあると思います。M 形式性ですか。ていうかプラトン立体って何?
K 何でしょうね。ともかく‘形式性’って言葉はこの人の自分の中でのキーワードだから注意して読まないと。
磯崎さんの形式性がスタティックなものに対する形式性だとすれば、ぼくが興味を持つ形式性は、設計段階においてものが成長していく過程の中にある形式性なんです。M ものが成長していく過程のなかの過程のなかの過程のなかの・・・エコーしちゃいました。
K コードにざっくりひっかかりましたね。我々のキーワード検索エンジンに。ものすごい直球です。
二川 最近の作品では、奈良の「御杖小学校」(98年)がありましたよね。それから新潟の「雪のまちみらい館」(99年)がありました。どちらの建物も何故こうなったのかということが理解できなかったのですが。
青木 わからない感じというのはうれしいです。おそらく二川さんがおわかりにならないというのは、ぼくの中にはモノを作っているという感じがあんまりないことに対してではないかと思います。建物としてのモノと言えばいいでしょうか。どちらかといえば、そこに人がいる状態を感じられるものを建物という空間でつくるという気がしています。それに外観から受ける印象もあるでしょうね。ぼくにとって外からどう見えるかはそれほど大きな問題として感じたことはありません。その形ということに対してよりも、自分がそこに立っている視点といいますか、連続していたり、不連続だったりするその視点において、自分がどう感じられるのかという問題が重要な気がします。それが上手く言えないので、最近は「空気をつくっている」と言っています。自分で言うのも何ですけど、「わからない」とよく人から言われますね(笑)
ぽむカテゴリ検索:けんちく家の好きなコトバ
検索結果《5件》:
・モノを作っているという感じがあんまりない
・そこに人がいる状態を感じられるものを建物という空間でつくる
・形ということに対してよりも、自分がそこに立っている視点
・連続していたり、不連続だったりするその視点
・空気をつくっている
M そこに人がいる人がいる状態を状態を視点といいますか視点といいますか連続だったり連続だったり不連続だったり不連続だったり・・・エコー繰り返してみました。形には興味がなかったり視点が大事だったり。
K 判定。この短いセリフの中に数々のけんちく家コードをちりばめた技といい内容といい、完璧な「けんちく家」です。
M しかし「けんちく家」のみなさん物質とか形とか嫌いですねー。だったら無理にけんちく続けなくてもいいのに。空気が好きならCG作家にでもなればいいじゃん。
K さもなきゃランドスケープデザインね。日記に書いちゃったけど。外観を気にしなくていいからぴったりだぞ。
二川 建物がひとつできあがったときに完成度という意味で上手くいっていない気がします。例えば、建築の施工はゼネコンがしますよね。その部分の詰めがどうも甘いような気がするんだけど。K こんなうずまきのけんちく施工難しいに決まってる。
M はい空気をつくるのはいいですがちゃんと建物もつくってくださいねー。
青木 でも、すべての建物が宝石箱のようにはつくれないし、つくる必要もないと思うのです。一番極端なのは「御杖小学校」の場合です。これはいろんな理由があって、完全にコントロールできなかった。例えば、設計JVであったり、お金の問題であったり。しかし、それだけではなくて、リファインすることをむしろ放棄した方がいいんじゃないかという感覚がぼくの中にはあったんです。普通の土木構造物である橋桁であったり電信柱であったり、そういう質のものを持つ建物もいいと思うんですね。M 「リファインすることを放棄した方がいい」って言ってますがどこかで聞いたことありませんか?
K リファインって洗練のこと? もしかして「建築家が手を離すタイミング」の話ですか?あやしいとは思ってたけど、青木さんて小嶋っていう人に似てませんか?
M うわー似てる似てる。手を離すのは自由ですが施工の段階で手を離さないでくださいねー。
K しかもなんか誤解してませんか?青木さんのリファイン放棄って土木構造物のそれとは全然違う質のものに見えますけども?
M ホントにこの人わかものに人気あるんですか?
K なんでこの人わかものに人気あるんですか?
M わからなくなってきました。
構成の先 良い子はマネしちゃいけません
モノとしての完成度もすごく重要だとわかっていたけれども、恐らくそれ以上に、どうやって求められていることを解き得る構成を作り出すか。それに一番エネルギーをかけていたし、それができれば自分の中で満足している部分がありました。興味の対象が転換していくきっかけとなったのは「潟博物館」(93年)からだと思います。あの建物は構成が非常にストレートに出来上がりました。しかし出来上がってみて初めてこれだけでいいのかなと疑問に思い始めたのです。構成だけでは何かやったことにならない。構成を一つの手段として、もう一歩先に進むためには、ものの在り方をコントロールしなくちゃいけないと思うようになったのです。
建築をやっている人間は建築を構成で見るかもしれませんが、大多数の人間にとっては、そういう風には見ないわけでしょ。その建築空間に入ったときに受ける感覚の方が重要なのではないかと思うんです。そう考えたとき、初めて構成とは何かと解って、頭がすっきりしました。構成や構造もそのことを感じるための重要な要素だと思えたんです。
K けんちく専門外の読者さんも多いぽむ企画ですので、少し解説しましょう。構成っていうのはようするに空間の組み合わせ方ですね。設計者の考え方が現れます。それは平面図に反映されます。
M 建物を外から見るというか、客体、オブジェクトとして突き放して見た視点ですね。ここ100年来のけんちくではとても大切なこととされていますよ。
K 山本理顕さんなんかは構成が明確なタイプですね。平面図がとてもわかりやすいです。一方この青木さんは、構成もできるけど、最近はむしろシークエンスを作っていくやり方にシフトしてきているんですね。
M つまり建物の中にいる人からの視点とか経験を大事にしてつくるやり方ですね。
K そのかわり平面図を見ても設計者が何考えているのかよくわからなかったりします。外からの視点で作ってないからね。へたをするとへっぽこ図面です。
M 最近はこういうのが流行っているみたいですね。
K 最近のけんちく、特に伊東豊雄氏の図面なんかをみていると、構成がわかりにくいわけじゃないけど平面図はあんまし重要じゃないという意志は読みとれる。そんな風に構成のわかりやすさに意味がないってのはなんとなく時代の感覚としてはすでにあったんだけど、敢えてはっきりいう人がいなかった。それをコトバに変換できるというところが人気の秘密かな。話の進め方も洗練されているし。
M まとめるとイマドキのけんちく家は「客体化された建物」よりも「主体的に経験する建物」のほうが好きということですね。まあ「クールな図面だけど建物へタレ」よりは、「へっぽこ図面だけど建物クール」のほうがだいぶタチがいいな。
K でも図面がへっぽこだとコンペとりづらいから、それなりに名が売れるまではやってはいけませんよ!
問題の青森のコンペ シークエンスメイキングなけんちくづくり
青森県立美術館のコンペについて→
青木 発端は美術館の隣の敷地が三内丸山遺跡の発掘現場だったことにあります。それまでの弥生と縄文の関係からいえば、弥生の方が上級の文明という風に捉えられていたのが、三内丸山遺跡が発掘されたことによって定説が覆され、縄文は弥生と同等かそれ以上の知恵と文明を持っていたということになったのです。青森県にとっては非常に誇りに思えることですし、それが精神的なシンボルにもなりえる。だからこそ、その隣につくることはすごく重要なことなのです。では、その重要なことを建物としてどのようにつくっていけばよいのか。縄文時代のものをぼくたちは見たこともなければ、想像しても多分間違った想像でしかない。しかし、現実には発掘現場のぽっかり空いた大きな穴は、巨大な柱がたっていた雄大な風景を彷彿とさせるし、そのもの自体がものすごく力のある景色なんです。その発掘現場が持っている質を美術館の敷地まで引き延ばし、繋いでいこうと思いました。
二川 この美術館は発掘品を展示する美術館なんですか?
青木 いえ、違います。
M あー、発掘現場かっこいいもんねえ。けんちくの人は好きでしょ。完成したけんちくより施工現場の足場とか好きなの。それで美術館側からはそんなこと要求されなかったんだけど、無理矢理結びつけちゃったの。
K わかりやすいです。とりあえず、青木さんのシークエンスをつないで空間を作るっていう考え方が一番あらわれたけんちくになるんじゃないかっていう感じはしますね。ユキオは平面図わかんないって言ってるけど、個々のシークエンスを繋いでる感じはバリバリしますよ。もけい→
M 竣工後に期待しましょう。ほんとにクールなんだろうな?ちゃんと施工しろよ!歯磨けよ!
ぽむマニュアル:大人になったらできること
わかりにくい図面はコンペに通りません。子供のうちはできるだけ明快な構成を心がけましょう。それなりにビッグになったらヘンテコな図面でも審査員が意図を汲み取ってくれるから大丈夫!がんばってこの青木さんや伊東豊雄さん、妹島さんのような実績(実作)を作りましょう。もちろんそれでもわかってくれない大人はたくさんいるので、そういう方に通じるレトリックも用意しておいた方がいいですよ。
| 池原義郎 『富山県総合福祉会館』 |
K 『ガレリア亀岡』によって京都ではかなり評判を下げた感のある池原義郎先生が、懲りもせずにまたもや・・・。
M 確かGA JAPANって作品をすごく選んでた(GAJAPAN 序論 参照)よね?このテの作品はビジュアル系だから載せない!っていう強いポリシーを持っていたのでは?
K 音楽業界でもビジュアル系のほうが売れしモテるから、自らの音楽性を捨ててそっちに移行する人はあとを立たないらしいですよ。それと同じで池原先生も、もともとは繊細な音源使った玄人受けするモノをつくってて、昔は編集長もけっこうリコメンドしてたんですよ。でも時代の流れには逆らえないというか。
M 本人は商売繁盛だからいいんだろうな。
K 二川幸夫(=渋谷陽一)も昔からのしがらみで新作が出たら取材してしまうのだね。
| 岸和郎 『かづらせい・寺町』 |
K ここは手近な場所にあるから、ちょっと前に見に行ったんですよ。そしたら、アジアのホテルウーマンみたいな人たちに出迎えられて大変に窮屈な思いをしました。この表現わかりにくいかな?
M いやわかるわかる。ものすごい圧迫感と緊張感をともなった手厚いサービスを受けるんでしょ。
K なにしろ骨董品屋のやってるギャラリーなもんで。5秒で退散して巧(註:向かいにある老舗エスニック雑貨屋)に逃げました。おかげで全然けんちく見られなかったっす。
M 二川編集長が、『全然岸さんらしくない』って言ってますけど、その意味を理解するどころじゃなかったんですね。
K うん。全く岸さんらしい建物にしか見えませんでした。
M いや、どうみてもものすごく岸さんらしい建物に見えるけどさ。
K 町家で、打ちっ放しで、意固地なほどに直交平面で。茶室やさんと組んで‘和の要素’が加わったみたいだけど。
M もともとそういう路線の人ですよね。
| 総合コーディネーター磯崎新 『岐阜県営住宅ハイタウン北方』 |
M 住むとしたらどれがいいかなー。
K どれが一番人気があるのかな? やっぱり妹島和世棟は不人気なのかな? 名誉の不人気。
M まず選択肢から外すだろ、こんなわけのわかんない家。布団干せないし窓掃除大変だし。だって県営住宅だよこれ。青山で売りに出すのとはわけが違う。
K こういうのって一番無難なヤツが人気ありますよね。一般人気とけんちく家人気が反比例。
M となるとこのホーリィ棟もダメですかね。外見ではじかれる。
K ホーリィ棟、メゾネットだから人気ありそうだけど。
M そうか。メゾネットはみんな好きだよな。高橋棟もいけるんじゃない?畳人気は根強いと思うぞ。
K まあ掃除はラクそうだな。使い勝手はディラー棟がいちばんよさそうですよ。シンプルでよくできてると思う。
M あーこれは人気ありそうですね。ベランダも広いし。この和室はおばあちゃんの部屋ね。そんでここがパパママの部屋と子供部屋。わかりやすい。最大公約数っぽい。
K まとめるとこんな感じですかね。
ぽむ予想
【GT】岐阜県営住宅記念
◎→ディラー棟
○→高橋棟
▲→ホーリィ棟
×→妹島棟
| 連載 「歴史は現代建築に必要か」 第2回 藤森照信 |
K 恒例の「歴史家の主張」3行要約シリーズ、第2弾は説明不要の藤森先生です。
M 恒例ったってまだ二度目じゃんよ。いちおう説明しておくと赤瀬川源平とか南伸坊と友達の藤森先生です。
K 屋根や壁にニラを植えたへんな家の設計もしています。
M 藤森研究室の新歓コンパでは自ら提案して六本木ヴェルファーレに行ったと聞きました。
K しかも自らお立ち台に上がって店員に引きずりおろされたとも聞きました。本当かどうか知りません。
M ようするにファンキーなおっさんですね。ってこれ説明になってんのか?
K いちおう言っておくと東大の先生です。
M さて前回、執筆者の方から「人がせっかく書いた文章を3行でまとめるな」とお叱りを受けましたので、今回から5行にしたいと思います。
K そういうことすると「なんで今回から5行なんだ。不公平だ」と言ってまた叱られませんか?
M ・・・それもそうですね。やっぱり3行にしましょう。
1.過去を現在と地続きと考える研究者もいるけど、ぼくは別のものと考えている
2.過去を当時の人の立場で、生きているように描くというのがぼくの姿勢である
3.それは現在とは違うもう一つの現実であって、未来への手がかりの宝庫であるなんだかうまくやられましたね。
K 「自分にとって過去は現在とつながってない」と言っていますね。
M そういうスタンスの歴史家には現在にあんまり興味のない人もいるけど、藤森先生が興味ないわけがない。だけど「現在を知るために歴史を学ぶ」って言うと、途端に現代のことも考えなきゃいけない責任が出てきちゃって肩凝るし面倒くさい。だから「現在とは切れてるけど、大事なヒント」と言って尊重するっていう立場はウマイと思います。自由だし楽しいよ。
K 地かな。戦略かな。
M 両方じゃないの?藤森先生何でも楽しそうにやるもんな。建物好き好き好き!
K 古い建物好き好き好き!な本書いて歴史学の伝道もばっちりしてるじゃん。文章おもしろいし、あれ読んで「歴史って楽しいかも」ってだまされた人多いでしょ。
M 私だ。藤森先生はこんなところで訴えるより、ばんばん楽しい本書いてみんなに読んでもらった方が早いっすよ。もう書いてるけど。
K まったくだ。さもなきゃ茅葺きとか土壁のファンキーな建物をばんばん建てるの。もう建ててるけど。
M そっちのほうがわかりやすいか。